ふたくる03
『ひとりで過ごすときは』
「アイシャさん…」
ぽつり、と呟きもらす。
「あぁ…アイシャ、さん」
もう一度もらした呟きは、かすかに熱を帯びていた。
「はぁ…」
嘆息をついて、黒いワンピースを着たフィリアはベッドの上にごろん、と仰向けに倒れた。
倒れた拍子にベッドの上に銀糸のように細く、絹のように艶やかな長い髪が花のように広がる。
「今日もアイシャさん、仕事だなんて…」
と、つまらなさそうな口調で呟くフィリア。
ここ最近、アイシャは教会の仕事で忙しく、フィリアはふたりでいられる時間が少なくて不満なのだ。
「退屈、だな…」
壁に立てかけた愛用のフランベルジェとシールド、それといつも身に纏っている白いクルセイダーの甲冑に視線を移す。
ひとりで狩りに行こう、と思ったこともあったが、アイシャと一緒でなければ気が乗らない。
だから…結局、宿屋のベッドの上に転がって時が過ぎるのを待っている。
「なんだか、わたし…」
こんなふうに、無為に時を過ごしているなんて、信じられない―――
アイシャと愛し合うようになる前は、こんなことはなかった。
アイシャと愛し合うようになってからは、一緒にいないと物足りなくて、一緒でなければ全てに価値がない気すらする。
そして、ひとりでいることが寂しい、ということもなかった。
「アイシャさん…」
天上に目を戻して、愛しい女性(ひと)の名前を呼ぶ。
彼女の名前を口にする度に、彼女の姿が脳裏をよぎり、想いが募っていく。
「アイシャさぁん…」
アイシャの笑顔、声、体温、匂い…が次々に思い浮かんで―――
「わたし…」
フィリアは自分の胸に手を当てる。
とくん、とくん、と鼓動が早くなっている。
それに、体も少しずつ熱くなってくる。
「我慢でき、ない…」
下半身に血が集まり、痛いほどに張り詰めているのがわかる。
フィリアは、男のモノも持っているので、物理的にも溜まってしまう。
その本来女性にはない感覚が、耐えがたいほどの、狂おしい衝動を生むのだ。
―――彼女の淫らに喘ぐ姿を脳裏に描くと、体がうずき始めた。
前は、その衝動を激しい戦いの中で昇華させていた。
が、アイシャを抱くようになってからは、その衝動に対して素直に身を任せるようになったから、フィリアはひとりで自分を慰め始めた。
「ん、あふぅ…」
胸に当てた手を動かして、揉む。
「あ、アイシャさん…」
自分の手をアイシャの手だと思いながら、自らを愛撫する。
「んぅ、きもちいい…っ」
強く自分の揉みしだきながら、頬を紅潮させて喘ぐ。
「アイシャさん、わたしぃ…」
胸を揉むだけでは物足りなくて、股間に手を伸ばすと、下着をずり下ろす。
「アイシャさんの中に…」
白い下着を脱ぎ去ると、少女の肢体に不釣合いなモノ…固くなったペニスを握る。
しゅっ、しゅっ、しゅっ…
限界まで膨らみ、フィリアの白い手の中でびくん、びくん、と震えるそれをアイシャの膣に挿れたときの感覚を思い出しながら
上下にこすり始める。
「わたし、昼間から…ッ、アイシャ…さんの…んぅ…こと、考え…ながら、あぁん!」
想像の中でアイシャを汚すことに、軽い罪悪感を覚えながらも、愛しい人のことを考えながら自分を慰める行為は、甘美で
抗うことは出来ない。
「アイシャさん…気持ちいいッ、んぅ…アイシャさぁん!」
名前を呼びながらだと、更に興奮と快感が呼び起こされる。
「んぅ…もっとぉ!」
フィリアは空いている手を口元に運ぶと
「んちゅ…んぅ…ぺちゃ」
指を舐めて湿らせて、ペニスの下にある女の子の部分に人差し指を差し入れる。
くちゅ…
「んぅぅ!」
背筋を走る快感に、ルビーのように紅く透きとおった瞳を潤ませて、身を震わせる。
「ひゃ、あぁぁん…!すごいぃ…きもち、いいッ!!」
しゅっ、しゅっ、しゅっ…
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ…
右手はペニスをしごき、左手の指は女性器をかき回す。
フィリアはふたつの快感に酔いしれ、快楽を貪るために激しく声を上げ、ひたすら手を動かす。
「きもち、いいよぉ!や…あんッ、おかしくなっちゃ…う…んぅ!」
頭の中が白くなり、気持ちいいことしかわからなくって、快感に意識が流されていく中で
(ひとりでするなんて、あのとき以来…)
ふと、そんなことを思い出していた。
一瞬で肉薄したフィリアは長いスカートを翻して、大上段に構えた太刀を迫りくるオークゾンビ達に向けて振り下ろした。
「マグナムブレイク!」
ドォォンッ!
振り下ろされた太刀の切っ先から炎が放たれ、放たれた炎は轟音とともに爆ぜ、オークゾンビ達を圧す。
「マグナムブレイク…ッ!!」
もう一度、次は太刀を薙ぐと、再び炎が爆ぜる。
ドォォンッ!
フィリアは更に剣を振るい連続でマグナムブレイクを放った。
そのたびに鮮やかな炎の花が咲いては散り、やがて最後の爆音が響くと、オークゾンビ達は散りゆく炎の花と共に崩れ落ちた。
「ふぅ…」
フィリアはひとつ息をついて、太刀を血を払うように軽く振ってから、鞘に収めた。
「フィリアちゃん、おつかれ」
そのとき、不意に後ろから声をかけれた。
フィリアは振り向くと、そこには騎士の青年がいた。
青年は精悍な顔たちをしているが、茶色の髪は手で撫でつけただけのようで、ざんばらな感じになっていて
良く言えばラフな感じ、悪く言えばだらしない感じがする。
「あ、ウィルさん。こんにち…わ!?」
挨拶の途中で青年騎士―――ウィルが赤ポーションを投げてよこしたので、フィリアは慌ててそれを両手でキャッチした。
「疲れてるみだいだから、あげるよ」
「あ、どうも…」
フィリアは頬をほんのり桜色に染めて、礼を言った。
「それにしても、フィリアちゃん結構強くなったよね」
と、手近にあった小さな岩に腰掛けながらウィル。
「そうですか?」
フィリアもウィルに倣って、手近な岩に腰掛けた。
「うん。最初あったときは、ひとりじゃ厳しそうだったじゃないか」
「そういえば、たしかに…」
フィリアは微苦笑して頷いた。
このオークダンジョンを狩場としてから、しばらく経つが、訪れて間もないころは数に押されて追い詰められた事があった。
そして、ちょうどその場に出くわしたウィルがフィリアに助勢し、ふたりで力を合わせて窮地を乗り切ったのだ。
「んで…そろそろ、もう少し敵の強い場所に行っても大丈夫なんじゃないかな?」
そう提案するウィルに対して、フィリアは困ったような顔をして、
「もう少し、ここで頑張りたい…かもしれないです」
曖昧な答えを返した。が、本当は…
(狩場を変えると、ウィルさんに会えなくなってしまう)
と、思っていた。
「ま、狩場のランク上げを慎重にするのも…アリか」
フィリアの胸中を知るはずもないウィルは、軽く相槌を打つ。
そこで会話が途切れた。
沈黙が訪れたが、それはすぐに破られた。
「しっかし…アレクの奴、遅いな」
ウィルは、ため息まじりの苦々しい口調でぼやいた。
「いつもウィルさんの後に来ますからね」
「んむ、困った相棒だよ」
アレクというのは、ウィルの相棒である青年プリーストだ。
ウィルとアレクは洞窟の下層(二階)を狩場としているのだが、いつもアレクはウィルより遅れてやって来る。
なので、よくフィリアとウィルは、ふたりでアレクが来るまでこうして雑談していた。
「まぁ…でも、おかげでフィリアちゃんと話ができるから、いいか」
と、笑いながら冗談めかした口調でウィル。
「そうですね」
フィリアも笑いながら、相槌を打つ。
こうして、ウィルと話している時間は、彼女にとってかけがえないものだから。
そう、フィリアはウィルに惹かれている。だから、アレクがもっと遅れて来てくれればいいのに…とさえ心のどこかで思っている。
「よぉ、ウィル。おまたせ」
だが、そんな淡い期待も、件の人の登場ですぐにうち破られた。
「フィリアちゃんも、こんにちは」
「あ、こんにちは」
フィリアが振り向くと、そこには金髪で細面のプリーストの青年が、片手をあげて立っていた。
「ったく…遅いぞ、アレク」
苦笑しながら言い放って、腰を上げるウィル。
「あー、すまん、すまん」
アレク、と呼ばれた青年は悪びれた様子のない口調で、謝罪の言葉を口にする。
「だが、俺にも色々とあるのだよ」
「さいですか」
ウィルはアレクの言い訳を軽く聞き流すと、フィリアのほうを振り返って
「じゃあ、俺らは下のほうに行ってくるから」
と、告げた。
「あ、はい。お気をつけて」
フィリアも腰を上げて、見送りの言葉を口にする。
「フィリアちゃんも、頑張って」
「まぁ、無理はしないように」
ウィルとアレクはそう返すと、洞窟の奥へと進んでいく。
そして、洞窟の道は曲がりくねっているため、二人の後ろ姿はすぐに見えなくなった。
「はふぅ…」
二人の姿見えなくなった後、フィリアは胸に手を当てて息をついた。
とくん、とくん、とくん――――
少し早いリズムで鼓動が胸を打っている。
「それに…」
体が少しづつ熱くなって、何かがざわめいている感じがする。
「……」
フィリアは懐から、蝶の羽を取り出すと、それを胸の前でぎゅっと握りつぶした。
すると、フィリアの体は青白い光に包まれ、光が消えるのと同時に、その場から姿が掻き消えた。
「はふぅ…」
プロンテラの宿屋の自室に戻ったフィリアは、ひとつ息をつくとばふっという大きな音を立てて、ベッドの上に座り込んだ。
「まだ…」
胸に手を当てると鼓動は収まるどころか、ドクン、ドクン―――と先ほどよりも激しくなっている。
それに、体の奥から熱がこみ上がってきている。顔も熱く、鏡を見なくても上気しているのがわかった。
「あ、はぁ…」
可愛らしい顔を歪めて、苦しげな吐息を漏らす。
フィリアには、何故こんなに体が熱くなるかはわかっていた。
そして、この熱は、井戸水を頭から被る程度では鎮まらないことも。
「鎮めたい…」
フィリアは、手甲を外し、ブーツを脱ぎ捨て、上着を脱いだ。
すると、処女雪の様に白い肌と白いブラジャーに包まれた小さな膨らみが露になる。
半裸になると、次はスカートのフォックを外し、腰をわずかに浮かせて両手でスカートをずり下ろした。
はらり、とスカートが床に落ち、白いショーツと細い脚が現れる。
白い肌に、飾り気のない質素な下着、発育しきっていない胸の膨らみに、細い肢体。
それらは、可愛らしく儚げな印象を与えるが、ひとつだけ少女に不釣合いな部分があった。
ショーツがテントを張ったかのように、膨らんでいるのだ。
それは、フィリアを苦しめるモノ。そして…これからフィリアに、淫らな行いをさせるモノ。
「あ、ふぅ…」
フィリアは、両手で下から掬い上げるように、胸を揉んだ。口から切なげな吐息が漏れる。
「ウィル、さぁん…」
自分の手をウィルの手だと思い、胸の上に手を這わせる。
「んぅ、あん…」
指だけでやわやわと揉み、
「あ、はぁ…あん」
時には手の平で力強く揉みしだく。
フィリアは控えめに喘ぎながら、想い人との行為の夢想に酔っていく。
「あん…ウィルさん、直接…触ってください」
手の動きをいったん止め、背中に手を回してブラジャーを外す。
大きくはないが、形のいい乳房が現れた。胸の突起はピンク色で、つん、と立っている。
「や、あぁん…」
両手で両の乳房を包み込むと、やわやわと優しく揉む。
「きもち、いい…んぅ、あぁん」
強弱をつけて揉むと、喘ぎが大きく、吐く息が荒くなってくる。
「あぁん…んむぅ…ひゃ、やぁぁ」
股間が疼くのを感じ、一度ふとももを擦り合わせてから、中指と人差し指の間に乳首を挟んだ。
「ひゃぁぁん…!」
こりこり、と乳首を刺激すると、電気が走ったような感覚が駆け抜け、フィリアは一際大きな喘ぎ声を漏らした。
「あぁん、びりびり…ってぇ…ひゃぅ!」
喘ぎながら、銀の髪を振り乱すと、まるで光が弾けたように、きらきらと汗が飛び散る。
「あ、はぁ…きもち、いい…あぁん!」
唇の端から涎が垂れるのも構わずに、胸を刺激し続ける。
「ひゃぁ…ん!きもちい…くてぇ、わたしぃ!」
股間の疼きが強くなり、二度、三度…と何回もふとももを擦り合わせる。
「やぁ…んふぅ!」
びくん、と震えて、熱くなるソレの感覚がたまならなくて、フィリアは股間に手を挿し入れて抑え付けた。
「かたくて、あついぃ…」
手の平に固く大きく膨らんでいるモノを感じる。それは熱くて、時折震えている。
まるで、刺激が欲しい…出したい…と訴えかけているように。
「ウィルさん…わたし、こんなふうに…なって」
フィリアはショーツに手をかけると、腰を浮かせて、ゆっくりとずり下ろしていく。
ショーツが取り去られると、バネ仕掛けようにペニスが跳ね出した。
固く勃起したそれが、フィリアを本来女性にはない感覚で狂わせるモノ。
「ひゃ…んぅ…ウィルさん、こんな体でもぉ…」
愛してくれますか―――?
後半の言葉を飲み込んで、フィリアはペニスに右手を添えて、上下に擦り始める。
「あぁん!んぅ…!あはぁ…」
手の中でびくんびくん、と暴れるペニスをしごきながら、大きな喘ぎ声をあげた。
「ひゃぁぁん…そんなにされたら、わたしぃ!」
ウィルが自分のペニスをしごいてる―――そんな映像を脳裏に浮かばせて、喜悦に満ちた顔で声をあげる。
くちゅ…
「んぅ…はぅぅ!」
ペニスの下にある、女の子の部分に左手の指を這わせた。
既にそこは濡れそぼリ、次々に奥から蜜が溢れ出してくる。
「あふ…ん」
フィリアは手の動きを止めて、左手を顔の前に持ち上げた。
自分の蜜で濡れた手は、艶かしく光っている。
「んぅ…」
フィリアは、しばらく自分の手を眺めた後、小さく唇を動かして、言葉を紡いだ。
「ウィルさん、膣(なか)に欲しいです…」
そう言うと、フィリアはベッドの上を這って、枕に頭を乗せてうつ伏せになる。
そして、膝を立てて、わずかに腰を上げると、右手でペニスを掴み、左手を秘所に当てた。
「来て、ください…」
フィリアは、左手の人差し指を秘所に進ませた。
くちゅ…
「あん…んふ…んぅ、動いていいですよ」
自分の指がウィルのペニスだと思いながら、出し入れする。
くちゅじゅぷくちゅぅ…
「あ、あっ、あぁぁん!」
指が蜜を掻き出す濡れた音を響かせる。
「おねが、い…こっちもぉ!」
左手で秘所を刺激ながら、右手でペニスをしごき始める。
「ふぁぁ!あはぁ…きもちいい!」
頭が痺れるような快感に襲われ、声を張り上げる。
しゅっしゅっしゅ…
ぐちゅじゅぷくちゃ…
ペニスを擦る音と、秘所を弄る濡れた音が響き、それらが更にフィリアを昂ぶらせていく。
「あぁん、あはぁぁん…!ウィルさん、好きぃ…好きぃ!!」
溢れる蜜が脚を伝って流れ落ち、シーツに海ができても
「ひゃぁぁん!きもち…よすぎてぇ、おかし…くぅ!」
唇から零れる涎が枕を濡らしても、構わずに快楽を貪りつづける。
「あぁ…!あふぅ…あぁぁぁん!もぉ…!」
がくがくと体が震える。フィリアは限界の訪れを感じると、上り詰めるために更に動きを激しくした。
「だめぇ…きちゃう!きちゃうよぉ!!」
何かが奥からくる感覚と同時に、限界まで膨らんだペニスがびくびくと蠢く。
「いっ…イっちゃうぅぅぅぅぅ!!」
フィリアの視界も頭の中もなった瞬間、びくんびくんと震えながらペニスから熱くて白い液の塊が吐き出された。
「あ…あぁぁ…」
どく!どく!と射精したのと同時に、身を震わせながら、きゅぅきゅぅと膣が指を締め付けた。
「あは…はぁはぁ」
どく…とく…とぷぅ…
最後の一滴まで出し尽くすと、力の抜けたフィリアは糸の切れた操り人形のように突っ伏した。
「はふぅ…」
射精と達した後の気だるさに身を任せながら、息を整える。
「わたし…こんな」
自慰の熱が引いていくと思考が冷静になり、自分のした行為に気恥ずかしさを感じ…
「え…」
体が―――熱い…?
羞恥心のそれから来る火照りとは違う。
「まだ、足りないの…」
熱を発しているのは、男と女の性器。
「これでは、もうダメなんだ…」
フィリアは、まだ気だるく、まだ寝ていたいと主張をする体を無理やり起すと、急いで服を着る。
着衣を正すと、環頭太刀を引っ掴んで部屋を飛び出した。
この熱を、忘れるために…。
「ひゃぁぁん…アイシャさん!」
フィリアは、ふたつの性器を弄りながら、喘ぎを声を部屋に響かせる。
ふとよぎった過去は白い快感の波に既に流されてしまっている。
「アイシャさぁん…!わたしっ…もぉ!!」
絶頂が近づき、ラストスパートに入ったその時―――
「もぉ…なにかしら?」
不意に声をかけられた。
「え…?」
フィリアは手を止めて、声のした方を振り向いた。
すると、そこには長い金髪を後ろでまとめたプリーストの美しい女性が、にこにこしながら立っていた。
「ア…アイシャさん、いつからそこに?」
ばくばく、と激しく鼓動する胸を抑えて、ぎこちない口調でフィリア。
「ついさっき…から、ね」
「はぅ…」
「もう少しでフィリアの、イク瞬間の可愛い顔を見れてたのに、つい声をかけちゃったわ」
そう言うと、アイシャはベッドまで歩いて、フィリアの目の前に詰め寄った。
「最近、ご無沙汰だから…溜まってた?」
と、フィリアの顔を覗き込みながらアイシャ。
「あ、はい…」
フィリアは顔を真っ赤にして、こくんと頷く。
「ふふ…わたしも、フィリアが欲しいから、しよっか?」
「はい…」
フィリアは、体に覆い被さりながら尋ねるアイシャに、短く答えた。
頬を桜色に染めて、潤んだルビーの瞳を期待に輝かせながら。
「可愛いわよ、フィリア…」
アイシャは目を伏せて顔を近づける。
フィリアも目を伏せて、アイシャを待った。
「ん、ちゅ…」
フィリアとアイシャは唇を重ねた。
そのとき、フィリアは再度、過去に思いを馳せた。
あの自慰の後、狩場を変えたこと。
そして、それからウィルに会わなくなったこと。
激しい戦いの中に身を投じることで性欲を昇華させるようになったこと。
極力、人と関わらないように、人を好きにならないようにしてきたこと。
自分の体のことを、誰にも打ち明けることなく、ひとりで生きて行くんだ、と思っていた日々。
(でも…)
それらは、既に過去のこと。
(今のわたしは…)
フィリアはアイシャの背中に手を伸ばすと
(アイシャさんがいる。愛する人と抱き合うことを知っている。)
好きな人と愛し合える喜びを噛み締めて、ぎゅっと最愛の女性を抱きしめた。